十二単といえば、宮中の女性が即位、朝賀、婚儀といった大礼にしか着ない正装で、源平時代以降の俗称である。
元来平安時代女性の正装として、内衣に紅袴をつけ、その上に単、五つ衣、打衣、表着を重ねて着て、唐衣裳を打ち掛け着たもので、そのうち平安末期には衣を重袿といって数多く重ね着る風があり、その重袿を十二領重ねて、下に単を重ね着たのを十二単というようになった。
今度大映の『朱雀門』で若尾文子さんの和の宮が「紫宸殿」及び「江戸城・式典の間」で着用する衣裳が正しい考証によって新しく作られたもの。その費用だけでざっと五十万円といい、重量にして一貫目近く、一旦着てしまうと容易に脱げない代物だけに、この衣裳には身動きつかぬくらいに縛られてしまった若尾ちゃんは、前後三日間の撮影ですっかり肩をこらしてしまったそうである。 |