夕秀は御降嫁が父の野心の結果と見ぬくと、傷心の和の宮にすすめ、有栖川宮と共に逃げることをすすめ、その事を計るが、伏見の乳母の家で待たれる有栖川宮の許へ急がれる和の宮は途中で所司代の手によってとりおさえられてしまった。そして和の宮は桂御所へつれもどされ、夕秀とはひき離されてしまった。

 そして父の家へひきとられて行く途中、夕秀の駕籠は勤王志士におそわれ、この時重傷をうけた友房は間もなく死んでしまった。その後夕秀は彼女に龍安(柳永二郎)という実父のあることを知り、彼の手びきで有栖川宮の隠家へ伴われた夕秀は、宮に身も心も捧げる身となった。

   

 宮と夕秀とは御降嫁の和の宮の一行をひそかに江戸まで送ったが、やがて世の中は大きく動き、将軍家茂は薨去、和の宮も病の床に伏す身となった。

 やがて東征大総督として江戸入りされた有栖川宮は、江戸郊外の仮寓で臨終の床にある和の宮を訪ねられ、最後の淋しい別れをつげられたのであった。

57年4月号