去る六月十四日から十七日まで大映京都撮影所へ取材旅行へ出かけたというと、大変聞こえがいいが、何分素人の事なので取材とはどうしたらいいのか皆目見当がつかない。 去る六月十四日から十七日まで、大映京都撮

 といって心配するかと思うとさにあらず「めくら蛇に怖じず」のたとえのごとく夜汽車ではゆっくり寝て京都入り、毎度来ますが静かな町です。

 前置きはこのくらいにして、さて皆様に『炎上』撮影中の雷蔵さんの所へ御案内しましょう。のんきな私の事ですから、皆様に御満足戴ける様に御案内出来るか心配ですが、その点はお許し下さい。さあ、参りましょう。(阿部・高木)

 

六月十五日

 昨日からの疲れに不覚にも寝すごした今日は、所内野球が行われ、雷さんは確かに十時から出場すると聞いていたが、でも昨日は三時頃までお仕事だし、十時といっても始まりっこないからと、のんびり太秦小学校へ出掛けて行った。所が所がである。行ったら試合は終って、今撮影所へ帰ったという事である。遊ぶ事になるとだれでも早起きするのかな?・・・といいながら撮影所へその足で飛んで行った。

 正門の所で、丁度家へ帰る雷さんにばったり。話によると、雷さんは監督。勝負は大変見事な負け方だったそうです。雷さんの背番号は20番でした。その日はこれから食事をして、嵐山へ行くというので、そこでお別れした。ここで面白い話を二つしましょうね。

怪我の功名の事

 『七番目の密使』撮影中、雷蔵さんが落馬されて怪我をされた事はすでに御存知ですが、目のふちのため、包帯を巻けばおおげさになる、といって治療しないわけにはゆかず、そのため赤チンを用いたそうで、全快するまでかかった費用は二百円也!!でもこの傷のおかげで?で『炎上』で放火する場面は大変迫力が出たそうです。

 シワにもよりけりの事

 『女狐風呂』におなじみの堺駿二が下っ引きで登場したが、最初のセットで新しい羽二重をつけて出たところ、羽二重がなれていないため後方でシワが出来て、少しうつむくとそのシワが見えるので、安田監督が「大体脳にシワの多い人は知的に優れているんですがね」といえば、思った事をいわずにおれない人、雷蔵さんがすかさず「いや脳にシワのある人は賢いと聞いていますが、頭にシワのある人は初めてですヮ」で、堺さん「何をッ!」