なんでも、しゃべりましょう


       

ハワイでの見聞

 山本 昨年の暮ハワイへおでかけになったのですが、いかがでしたか?

 市川 向うは日本映画ブーム、特に時代劇ブームですね。日系以外に、いわゆる白人系、ポルトガル系、フィリッピン系などがいるんですが、そうした外人にも時代劇ファンが多いのにはおどろきました。

 山本 向うの後援会のご招待ですか?

 市川 いや、劇場のお正月のアトラクションによばれたんです。

 山本 風俗、食物、その他なんでも、あちらで特に印象に残ったものは?

 市川 食べものは、日本のものが何でもありますね。お正月には数の子や黒豆もありました。特においしいとも思わなかったけれど、相当高いことは高いんでしょうね。ぼくは一つも金を払わなかったからわからないけれど(笑)。ただ向うの食べものは、とても量が多いのにはおどろきました。

 山本 あちこちいらしたの?

 市川 いや、ホノルルだけです。ワイキキの海岸ではちょっと泳ぎました。さすがに観光地だと思ったのは、自然にもある程度加工が加えられていて、海辺にもゴミ一つないということです。毎日ちゃんと掃除しているんですね。砂浜がきれいで遠浅なのも、自然だけでなく、ちゃんと砂をまいて遠浅にしているんだそうです。

 山本 つまり観光地というしっかりした政策があるわけですね。

 市川 それからぼくが非常におもしろく思ったことは、向うの劇場に、日本観光の手引きのようにして、京都や奈良の仏像や風景、風俗などがカラー写真で飾られてあるんです。日本ではなんとも思わず見ているのが、向うで見るとちがうんですよ、京都の鴨川の床、あれなんか、ちっとも美しいともなんとも見えない。なんだか原始的な、南洋土人の生活(笑)のように見えて、妙な感じなんです・・・あんな感じで見たのははじめてですよ。

 山本 やはりそれだけ外から見られたというわけですね。アフリカなんかの木の上で生活しているあれね(笑)。そうすると、向うから来た外人はそんな風に見ているのも多いのかしら(笑)。

 市川 日本という環境のなかではまたちがうでしょうが、東洋にある一つのお伽の国的見方もあるかも知れませんね。ぼくはハワイでふとそれを感じましたね。近代日本というのを世界はあまり認めてないような気がするな(笑)。

 山本 これから外国へいらっしゃるとすると何処へ行くのがご希望ですか?

 市川 世界一周をしたいですな。いろんな処へ行って、いろんな風物に接したいですね。そして日本へ帰ったら、日本というものを見直すところがあると思いますね。

 山本 アメリカか欧州かという場合は?

 市川 ぼくはアメリカより欧州ですね。