陸軍中野学校シリーズ(66/6〜68/3)

 日本陸軍の諜報員養成機関といわれる陸軍中野学校の実態とその活動を描く邦画では、珍しいスパイ映画。66年〜68年にかけて5本製作され、時代劇スターだった市川雷蔵の現代劇での代表作となった。

 陸軍中野学校の一期生となった椎名次郎が敵国スパイをつきとめて、その謀略を打ち砕くというのが基本設定だが、増村保造が監督した一作目のみその基本パターンからはずれて、中野学校生ひとりひとりの悲哀を描いた青春映画として出色のできとなっている。娯楽色がついたのは第二作目以降。

 主人公・椎名のキャラクターは“大菩薩峠”“眠狂四郎”シリーズで市川が培ってきたクールで無頼な二枚目役の延長線上にあり、まさにハマリ役。レギュラーらしいレギュラーは上官役の加東大介ぐらいしかおらず、あとは毎回女優がゲスト出演というシリーズもののお決まりパターン。全作モノクロ撮影の画面も、とかく嘘っぽくなりそうなスパイ戦にリアリティを与えている。( ぴあ CINEMA CLUB[邦画編]より)


陸軍中野学校 シリーズ

陸軍中野学校
 
 
 
 

 

 

 

(03/12/66)

 

 『中野学校』(大映)

 大映京都作品『眠狂四郎多情剣』をとりおえた市川雷蔵は、いま上京している。一年の大半を京都ですごす彼にとって、次回作との間のわずかな休暇はかけがえのない貴重な時間で、「映画や芝居をじっくり見て歩き、大いに背のびしたい」のだそうだ。だがこんどの上京はそればかりでない。週刊サンケイに連載中の畠山清行氏の同名旧日本陸軍スパイ戦記を映画化する大映東京作品『中野学校』(増村保造監督)に主演が本ぎまり、その打合せという主目的があるのだ。雷蔵にとって現代劇はこれが五本目。でも「セビロ姿をみせるのは、こんどが初めてですヨ」と笑う。東京撮影所に腰をすえて仕事をするのも『歌行燈』いらい二度目のことである。

 これまでの市川雷蔵の現代劇は『炎上』『ぼんち』『破戒』『剣』であるが『破戒』は明治時代の話であり、『ぼんち』は大半がきもの姿。『炎上』『剣』は学生服だった。

 ところがこんどはほぼ全編をセビロ姿で登場することになりそうだ。というのは旧日本陸軍の軍人ではあるのだが、スパイであるため軍人臭を一掃、英国紳士的教育を受けて市民にまじって活躍するからだ。

 まだ増村保造監督、星川清司シナリオライターがやっと資料の収集をおえた段階で、役柄のこまかい骨格はできあがっていないが、増村監督も「軍服姿は陸軍自動車学校を卒業してスパイ養成機関である中野学校に入学するわずかの期間だけで、あとはセビロ姿ということになるでしょう」と、語っている。

 「私が演ずるのは昭和十四年に世田谷の陸軍自動車学校を優秀な成績で卒業し、少尉に任官、千葉県・佐倉の連隊に勤務するが、それもわずか一カ月で陸軍省に転属させられ、陸軍諜報部員養成機関である中野学校に第一期生として入学する青年将校。母親ひとりの女手で育てられ、恋人もいるが、戦死したことにさせられて徹底したスパイ教育を受ける」

 その教育が、この映画のひとつの見せ場でもあるが、手品師に毒薬を人知れず飲ませる方法、有名な金庫ドロボウに金庫のあけ方を教わったり、忍術を研究し、擬装爆弾や銃器による巧妙な殺人手段を教わる。しかも、ダンスや待合い遊びにも徹し、女の解剖図を前に女を興奮させる訓練まで受けるし、外国語やさまざまな職業もマスターするという徹底ぶりだ。

 「だが、実際に英国大使館に潜入して暗号書を盗写するが、相手方にそのことを知られる。しかも、そのことを知らせたのは彼の戦死通知に疑問を感じて陸軍省に潜入していた恋人であることを知る。彼は恋人がいずれ憲兵隊の手で銃殺されることを知るだけに、最初にして最後の夜を彼女と過ごし、中野学校で習得した女をよろこばせるテクニックのすべてを投入したすえ、毒薬をワインにまぜて飲ませて殺してしまう」

 いまのところこうした教育を受けた主人公が中野学校を卒業して、第二次世界大戦がはじまろうとしている支那大陸に潜入していくまでを描くことになっている。

 「“眠狂四郎”“忍びの者”といったシリーズものも大事だが、数少ない現代劇というだけじゃなく、とても魅力のある仕事だと思っている」雷蔵は、メガネの底にいつになく激しい闘志をみなぎらせながらこう結んだ。

 

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