人肌牡丹

1959年1月3日(土)公開/1時間24分大映京都/カラーシネマスコープ

併映:「男十九の渡り鳥」(田中重雄/川口浩・叶順子)

製作 三浦信夫
企画 山崎昭郎
監督 森一生
脚本 松村正温
撮影 相坂操一
美術 内藤昭
照明 岡本健一
録音 海原幸夫
音楽 斎藤一郎
助監督 井上昭
スチール 松浦康雄
出演 山本富士子(深雪・虚無僧・小鈴・緋牡丹のお雪・仙石右近)、梅若正二(佐久間伊織)、三田登喜子(園絵)、近藤美恵子(待ち兼ねのお吉)、鶴見丈二(前田利秀)、田崎潤(泊兵庫)、清水元(医師玄庵)、香川良介(佐山能登守)
惹句 『一段と冴えて来た山本の殺陣、雷蔵と二人虚無僧で大あばれ!』『ウットリする山本の男装の魅力!ウットリする雷蔵の剣の魅力!お待ちかね!日本一、人肌コンビの黄金娯楽篇』『匂いこぼれる姿も七色、男装の山本が斬って唄って恋をして、美剣士雷蔵と大暴れ!』

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★ 作 品 解 説 ★

 この夏、見事な大ヒットを放ったデラックス娯楽時代劇『人肌孔雀』の好評にこたえて前作でおなじみのスタッフで、前作より一段と豪華に、一段と面白く描くものが、今度の『人肌牡丹』です。従って、ヒロインの深雪に扮する山本富士子は、今回も、匂いこぼれるような美しい七変化の妙を見せるわけで、すなわち、お小姓頭巾振袖の若衆姿の男装をはじめ、可憐な町娘、天蓋姿の虚無僧、牡丹の肌の鉄火女、「連獅子」の仔獅子、濃艶の女師匠、高貴の姫君と文字通りの七変化で、殺陣に、唄に、踊りに、全篇を通じて大活躍します。

 これに対し、市川雷蔵もまた、前作が浪人姿だったのが、今度は遊び人風の謎の男十六夜の源三、実は幕府目付役高楠源三郎になってお得意の颯爽たる美剣士振りを十二分に発揮し、山本と並んで、若さと美しさと剣の魅力をたっぷり娯しませます。

 更に、前作でおなじみの梅若正二が病気休養以来、暫く振りで颯爽たる若侍姿で登場、近藤美恵子が妖艶な鉄火女になり、三田登喜子が清楚な腰元に扮する外、『伊賀の水月』に次ぐ鶴見丈二の時代劇出演で、岸正子と共に加賀の若き藩主兄妹を演じます。また、物語の巾と奥行きを加えるバイプレイヤー陣としては、田崎潤、舟木洋一、香川良介、清水元、本郷秀雄、伊達三郎、伊沢一郎、小堀明男らの一流の人たちが顔を揃え、デラックス版たるの所以を一層はっきりさせるものです。

 これらの豪華キャストを以て、新鋭作家の松村正温の力作脚本は一段とその魅力を発揮し、森一生監督の娯楽に徹する演出も、前作以上の力を示すことは疑いありませんし、キャメラの相坂操一技師が色彩ワイドの鮮麗な大画面に繰り展げる効果も、期待すべきものがあるでしょう。

 前作「人肌孔雀」が、美貌の乙女が江戸を背景として、神出鬼没の活躍をする復讐時代劇だったのに対し、今度の「人肌牡丹」では白雪の加賀連山を背にした金沢百万石の城下へ乗り込んだ江戸の町娘が、まだ見ぬ弟妹、すなわち奸臣どもの陰謀で危難にさらされている藩主兄妹を救うため、超人的な七変化で敵側を眩惑する波瀾万丈です。

 なお『人肌孔雀』の主題歌を唄って、一段と魅力をました山本富士子は今回もビクター吹込みの主題歌を、篇中に挿入して、この映画の楽しい雰囲気は、更に倍加されることも、ここにつけ加えておきます。 ( 公開当時のパンフレットより )

 水もしたたる山本富士子の男装、胸もすく市川雷蔵の美剣士振りで、今夏大ヒットを放った森一生監督の『人肌孔雀』の好評に答えて、大映京都ではお正月番組を飾るデラックス娯楽巨篇として再び同じスタッフを以って、製作を開始しました。

 ヒロイン深雪に扮する山本富士子は七変化の活躍をし、市川雷蔵の美剣士ぶりと相まって期待できる活躍です。(映画ファン59年2月号より)

 

 

 

 

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 加賀前田家では当主利秀の病弱に乗じ、分家の佐山能登守が国家老と結託して藩の実権を握る隙をうかがっていた。一方、江戸の裏長屋に町娘として育った利秀の異母妹深雪は虚無僧姿に身をやつし加賀へ向かう。その後を十六夜の源三というナゾの男が追う...。山本富士子が町娘、虚無僧、踊り子、女やくざ、若衆、踊りの師匠、お姫様と次々に変装、七変化の妙を見せる。

 単身若衆姿で敵中へ斬り込んだ江戸の町娘深雪は、敵の奸計にかかって絶体絶命。このとき疾風の如く現われたもう一人の虚無僧は、群がる敵から深雪の危機を救った。この虚無僧こそ誰あろう、謎のカギを握る十六夜の源三・・・。

 白雪の加賀百万石のお家騒動を背景にくりひろげる、山本さんの水もしたたる美剣士ぶりと、雷蔵さんの見事な剣さばきが、再びファンを魅了することでしょう。(平凡59年2月号より)

 

人肌牡丹

作詞:佐伯孝夫 作曲:吉田正 編曲:佐野雅美 唄:山本富士子

一、
旅の雲さえ淋しく急ぐ
ここは峠路、国境
加賀はなつかし百万石の
清く咲け咲け梅の花
二、
姿七彩、望みは一つ
くぐる白刃の下は闇
娘だてらと言わずに欲しや
加賀はふるさと、親がいる
三、
一目まぶしい人肌牡丹
張ったあの夜も思い出に
秘めてはずかしこの恋ごころ
赤く燃やすはいつの日ぞ

十六夜がらす

作詞:佐伯孝夫 作曲:吉田正 編曲:佐野雅美 唄:三浦洸一

一、
睨みゃにらむで器量が上る
ほんにとくだぜ、いい女
月に浮かれて十六夜がらす
迷い込んだとササエー思わんせ
二、
河岸で見たらば思うだろうぜ
好いた同士のさし向かい
わるかねえのに、ちと野暮用を
乗せてくやしいササエー屋形船
三、
遊び人さよ、盗人被り
さらに似合って苦笑い
知れちゃいけない知らしちゃならぬ
謎の男さ、ササエー気ままもの

 ★ 梗 概 ★

 江戸頬白長屋の娘深雪は、旅姿の侍に斬られた母お滝の遺言で、片見の鈴を自らたずさえて、母の故郷加賀へ急いで旅立った。

 間もなく−金沢城下外れの丘で、厳しい警戒線を突破して潜入した怪しい虚無僧の姿があった。

 当時、加賀藩では当主利秀が虚弱なのに乗じ、分家佐山能登守は国家老泊兵庫と共に、藩の実権を握るべく、硬骨の重臣たちを暗殺、最後に利秀とその妹幸姫の命をも狙っていた。これに対し利秀らを守る近習佐久間伊織と腰元園絵は、遂に江戸家老板倉隼人の救援を求める書状を作り、園絵がその密使に立った。

 これを知った陰謀派の剣客一位田東馬は、配下と共に二人を急襲、伊織は奮戦して園絵を逃がした。虎口を脱した園絵の前に現れた妖艶な女待ち兼ねのお吉は、密書を奪わんと迫り、これを救ったのは謎の虚無僧、駆けつけた東馬の一刀に裂かれた天蓋から、以外深雪の美しい顔が現れた。その間、密書は園絵とお吉の間に落ち、横合いから伸びた盗人冠りの男十六夜の源三の手に入り、源三はすばやく闇に消えた。

 泊兵庫の腹心甘利無二軒は、兵庫の家に出入りする濃艶な踊りの師匠小鈴の姿に目を見はったが、小鈴は兵庫と東馬の密談に耳を傾けた。

 人入稼業輪島屋嘉七は、賭場でお吉に勝ち続ける女やくざ緋牡丹のお雪の体に野心を抱き、お雪にサシの勝負で百両と女の体を賭けさせた。嘉七側のサイがイカサマと喝破したのは十六夜の源三、色めく乾分たちを軽くイナシて引揚げる彼の姿を、お吉は惚れ惚れと見送った。非を認めた嘉七は、詫びの印にお雪を奥座敷に招き盃を交したが、彼が酔い潰れるとお雪は部屋を出て、邸内の秘密を物色した。酔ったと見せた嘉七は、お雪を追いつめて、廊下の落し穴から地下牢へ転落させた。そこに捕らわれていた御典医玄庵は、陰謀派から毒薬を盛れと責められていたのだ。玄庵はお雪に陰謀派の企図を語り、明日に迫る幸姫の危難を知らす手段に焦慮していたが、その時、何者かが一条の縄梯子を降してきた。お雪は動けぬ玄庵を残して、川端の道へ脱出したが、直ちに東馬一味の急追に逢い、逃げ場を失ったところを、屋形船から招く十六夜の源三に救われた。謎の男源三を警戒するお雪とお雪の素性を探ろうとする源三と、争う二人の間にお雪の鈴が転り落ちた。これを見た源三は、急に態度を変えて、お雪を親切に岸へ届けた。

 次の日、藩主代参の幸姫の行列を、郊外の野で一団の黒覆面が襲い、虚無僧姿の深雪はこれを待ち受けて救援に赴いた。が、駕籠の中は幸姫と無二軒が入れ替わっており、罠に落ちた深雪は次第に苦戦となった。この時、疾風の如く現われたもう一人の虚無僧は、無敵の勢で一味を薙ぎ払って、危地から深雪を救ったが、幸姫が敵手に落ちたことだけをいって、名も告げずに立去った。

 嘉七と東馬は遂に玄庵から手に入れた毒薬の利目を試すため、乾分芋松に毒酒を飲ませたが、芋松が平然としているので、欺かれたと覚って玄庵を斬った。身の危険を感じた芋松は必死で逃げ出したが、東馬一味に囲まれ絶体絶命の彼を救ったのは振袖姿の若衆、芋松と血路を開いて小鈴の家へ逃げ込んだ。東馬が乗り込んだ時には、若衆の姿はなく、顔見知りの小鈴独りがいるので呆然と引上げた。

 次の日、城中に現われた若衆は、江戸家老の使者仙石右近と名乗り、利秀の前で江戸に伝わる加賀藩の内紛を申し立て兵庫を激怒させた。この時、老女沢野が捧げて来た利秀の薬湯は、別に手に入れた鴆毒、これを見抜いた右近から毒見を迫られてためらう沢野は、罪の発覚を恐れる兵庫の抜討ちに倒れた。右近は更に芋松を生証人として引き出したが、兵庫は幕府の裁きで白黒をつけようと放言、事件が公になれば前田藩も処分を免れないことを知る右近らは、それ以上の追求は出来なかった。

 兵庫一味は漸く右近と小鈴が同一人と覚り、小鈴の家を急襲したが、小鈴はその頃兵庫の用人で正義派の速水紋太夫と逢い、紋太夫は一味の連判状の所在をつき止めたことを告げた。

 次の夜、紋太夫は連判状を盗もうとして、兵庫の刃に倒れたが、それより先に連判状は何者かに盗まれていた。同じ夜源三は町の屋台そば屋に巻物らしきものを渡し、無二軒がそれを連判状と見て、そば屋から奪い返したが、中味は真赤な偽物だった。

 明けて正月、城内大広間で催された歌舞伎踊に小鈴が潜入したとの報に、東馬たちは色めき立った。男衆に化けた源三に踊り子姿のお吉は、源三への恋を諦めたと告げ、幸姫檻禁場所を竜眼岬の洞窟だと教えて、淋しく立去った・・・・・・。( 公開当時のパンフレットより )

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 人肌牡丹        小倉真美

 加賀藩のお家騒動にからんで、山本富士子が姫・虚無僧・踊の師匠・女やくざ・若衆の五変化を見せるのが狙い。なんのための五役かなどと考えるのは野暮の骨頂だが、一種のショーと見ても余りにデタラメすぎる。若衆姿には倒錯的な魅力が出て楽しめるが、滅法強い彼女が女姿になると、剣の冴えの鈍るのも不思議。乱闘のカラミがまずく、斬られる前に倒れるのが出て、観客席から失笑が湧くのも御愛嬌。

興行価値 他愛のない作品だが、山本富士子の七変化を売れば手固かろう。(キネマ旬報より)

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