上「夏祭」 長町裏の場 / 下「涼み舟」(59分)

 

清元連中、竹本連中

団七郎兵衛 片岡我当
三河屋義平次 坂東蓑助
祭りの若い者 若橘他大ぜい
駕屋 笹二郎、扇太郎
一寸徳兵衛 市川寿海
女船頭吉田屋お政 嵐雛助
田舎娘おつる 坂東鶴之助
町娘おみね 中村あやめ
同おゑん 市川莚蔵
茶屋若女房おのぶ 中村昭二郎
太鼓持三中 嵐鯉昇
若旦那玉太郎 中村扇雀
江戸芸者はりまやお蝶 中村錦之助

 

淀の秋

 

食満南北
振付 藤間良輔
長唄連中

女船頭吉田屋お政 嵐雛助
田舎娘おつる 坂東鶴之助
町娘おみね 中村あやめ
同おゑん 市川莚蔵
茶屋若女房おのぶ 中村太郎
芸者玉鶴 昭二郎改め延太郎
太鼓持三中 嵐鯉昇
若旦那玉太郎 中村扇雀
船頭大和屋三蔵 坂東蓑助

 

 

 蓑助の善舞−これは文句なしに面白くて結構。終日観劇の疲れを快く癒してくれたが、そのあとの「淀の秋」が駄足。幕切れに蓑助が顔を出すだけなのは更に駄足−折角若手を揃えて踊らすのなら、やはり真面目な本筋もので、キッパリと打ち出して貰いたかった。(井上甚之助)

淀の秋を観て

かんざしが ゆれて娘のおぼこぶり

緋鹿子も とれてたのしい涼み舟

町娘 うちわ持つ手の美しき

涼み舟 みんなたのしく舞おさめ

池田 千鳥

 

 

 

 

幕間第三回・昭和二十五年度 歌舞伎新鋭俳優人気投票
本年度に於いて最も優秀な
演技を見せた俳優は誰でしょう?
 幕間の人気投票も愈々第三回目となりました。幕間が演劇雑誌の最高峰として斯界の権威となった今日、これは単なる人気投票ではなく、歌舞伎今後の動向に対する一大推進力たらしめたいと思います。 奮ってこの運動に御参加下さい。

投票規約

一、資  格 幕間愛読者に限ります。
一、投票用紙 不正投票防止のため特に幕間挿入の用紙に限ります。
一、記入事項 イ、貴方が本年度(昭和二十四年十二月より本年十一月迄)で最も優秀だと思われた演技者とその役名(但し、五十歳以下の俳優に限る)
ロ、上の俳優にやらせたい芸題とその役名
ハ、必ず御芳名を御明記下さい。(明記なき場合は無効とします)
一、締  切 十二月十五日(同日日付を認めます)
一、発  表 幕間新年号紙上(但し、十二月号紙上にて中間報告を行います。)
一、採点方法 投票数より順序を定めます。但し、東京所属と大阪所属の俳優は別個に採点ののこと。
◆第一位になった演技者とその最も優秀な役名を記入して投票された方には、サイン入りポートレートをお送りします。

投票は必ず巻末挿入の投票用紙をお用い下さい。

 

 

花評判娘長屋 七場

作並演出 瀬川如皐
装置 松田種次
衣裳考案 吉川観方

広田屋番頭興平 中村鴈治郎
売卜者尾形磧庵実は尾形鉄之進 嵐三右衛門
広田屋重右衛門 浅尾奥山
同息子重三郎 中村扇雀
太夫元権右衛門 坂東三津三郎
木戸番 嵐鯉昇
難波乾分片目の由 中村松若
難波の儀十 市川九団次
江戸屋金助 坂東蓑助
磧庵娘お千代 坂東鶴之助
水茶屋雇娘お縫 中村あやめ
長屋娘お駒 市川莚蔵
同おつる 中村太郎
広田屋女中お玉 中村富十郎

 

 
 「てれめん」の焼直しで、作は極めて平板だが、若手連を中心に、鴈治郎、富十郎、蓑助が脇へ廻って助演という企画は、なかなか面白く、舞台にのびのびとした明るさが漂っていた。

 扇雀の若旦那、鶴之助の娘も役どころよくやっているが、鴈治郎、富十郎が軽い脇役で、楽しそうに付き合っているのが、一際目立った。三右衛門、九団次、松若なども、こんな中では流石に老練さがものを云って、いつもより上出来だった。繰り返し云うが、作は平凡だが、楽しんで見ていられる芝居だった。

 かくして霜月の大阪歌舞伎座は、「忠臣蔵」の上方決定版のほかに、これも上方御自慢の延若の「楼門」、好演揃いの久々の綺堂物、それに若手を働かせた二番物と、それぞれに舞台を生かしたところ、“本年掉尾特別興行”の宣伝文句を、あたら虚名に終らせなかったのは、正に祝福していいだろう。(井上甚之助)

 

 

 

 

奇芸・珍芸にヤンヤ

花やかに「歌舞伎前夜祭」

 十一月大阪歌舞伎座公演に先立つ「歌舞伎前夜祭」は二日夜六時半から大阪歌舞伎座で開催、俳優と観客が膝を交えての交歓という前例のない試みだけに定刻前から超満員、開演も三十分くり上げ、六時半開幕。

 まず坂東蓑助の司会で芸達者、腕自慢の役者連中が腕によりをかけての奇芸・珍芸が続行。中でも太郎、あやめの「当世二人羽織」、鴈治郎「珍義太夫弁慶上使」、吉三郎「鴨緑江」、奥山「子守」、若手売出し鶴之助、扇雀の「ボタンとリボン」、九団次「京の都おどり」、延二郎「夕ぐれ」、寿海「手品」などが人気を呼んだ。

 また、我當、富十郎の「小唄」、寿三郎、我當、三右衛門ら総出演の長唄「道成寺」などは流石と思わせるノドと腕を見せたが、圧巻は雛助の女形扮装「娘になるまで」と武智鉄二氏演出の「忠珍蔵」大序から六段目までの茶番劇だった。最後に全員「かっぽれ」の賑やかな総踊りのうちに午後九時幕を閉じた。

 なお、当日若手俳優実川延二郎、坂東鶴之助、中村扇雀、嵐鯉昇、中村あやめ、中村太郎、片岡秀公、市川莚蔵、中村紫香に大阪キャバレーから花束が贈られた。

歌舞伎座の前夜祭を観て

 十一月二日突如として歌舞伎前夜祭が行われ、京阪神地方のファンを熱狂せしめた。

 普通かつら頭の役者しか観て居ない私達に、背広姿の役者和服姿の役者。歌舞伎史に空前絶後のいろいろの隠し芸はくりひろげられた。特に若手の活躍振りは驚くものがあった。太郎・あやめの「二人羽織」、日頃の舞台でたどたどしく演じる太郎も、今日はのんびりと大いにはり切ってやって居た様でうれしく思えた。

 雛助の舞台化粧の仕方、今迄みたくても見られなかったもの故、うれしくうつりゆく化粧の美しさに唯感心するばかりでした。

 「チューチングラ」は延二郎・鯉昇・莚蔵の若手の大活躍。莚蔵の判官の笑顔の可愛らしさは印象的でした。鯉昇の勘平の美しい型、長身の彼にはうってつけの役でした。早く本舞台でする様になったら!と一抹の希望を持って見ました。

 最後の長唄、「京鹿子娘道成寺」。長唄に寿三郎、吉三郎、成太郎、秀公、松若とずらりと並んだのはよいが、聞くほうのくたびれた事。つづみの扇雀・太郎の形だけで音色のひびかない事、太鼓の鶴之助・莚蔵の恰好。見聞きして居てお腹の皮のよじれる程笑いました。唯我當・あやめの三味線だけが素人ばなれして居て安心して聞けましたが、一つ忘れものは、鴈治郎さんの義太夫には恐れ入りました事と、寿海さんの手品の上手だった事です。

 たのしかった今日を省みて、大阪に住まった事を喜ばしく思い、今後とも年に一度はこの様な催し物をして戴けます様お願い致し、今日の日のあった事を感謝します。(池田千鳥)

 

 

 

 

鴈治郎武智カブキへ!!

 武智鉄二氏指導の若手歌舞伎は昨年十二月の文楽座以来三回の公演を持ったが、本年十二月西宮、神戸各々一週間及び府下巡回の公演を行うことが決定した。

 この公演には前回同様坂東蓑助が出演する他、中村鴈治郎が補導出演する。決定狂言は以下の通り。

◆昼の部

(一)「廿四孝」十種香から狐火まで

八重垣姫 中村扇雀
勝頼 実川延二郎
濡衣 中村太郎
白須賀六郎 中村鴈治郎
謙信 浅尾奥山

(二)「修善寺物語」

夜叉王 坂東蓑助
頼家 中村鴈治郎
中村扇雀
市川莚蔵
春彦 嵐鯉昇
下田五郎 市川靖十郎
大作

(三)「勧進帳」

弁慶 坂東鶴之助
富樫 実川延二郎
義経 市川莚蔵
四天王 嵐鯉昇
中村太郎
田三郎
大作

◆夜の部

(一)「車曳」

松王丸 実川延二郎
梅王丸 嵐鯉昇
桜丸 中村太郎
杉王丸 田三郎
時平 浅尾奥山

(二)「合邦」

玉手御前 中村鴈治郎
合邦 坂東蓑助
合邦女房 浅尾奥山
俊徳丸 中村扇雀
浅香姫 市川莚蔵
奴入平 靖十郎

(三)「弁天小僧」浜松屋から勢揃いまで

弁天小僧 坂東鶴之助
日本駄右衛門 実川延二郎
南郷力丸 嵐鯉昇
赤星十三郎 中村扇雀
浜松屋幸兵衛 大作
伜宗之助 田三郎
鳶頭 靖十郎