一方『濡れ髪三度笠』は、やくざと将軍の息子が珍道中をくりひろげるというコミック活劇。『ジャン有馬の襲撃』で一本調子な主人公を、一本調子に演じた・・・と反省する雷蔵が、こんどは草間の半次郎というやくざにふんして、ふくらみのある演技の中に、やくざのすべての要素を現わそうと大張切りだが、この半次郎に付きまとってはなれないのが、淡路恵子の女道中師お蔦。
このほど行われた二人のラブシーンは、淡路がいきなり雷蔵に抱きついての物すごいファイトに、一瞬雷蔵の顔がサッとこわばるほどだった。セットの合間には、ビンボー、ビンボーとノロけておきながら本番になっての、この思いがけない体当り演技に、さすがの雷蔵もたじたじ。この勝負はどうみても淡路が押し気味といったところだったが、雷蔵の半次郎も、けっきょく淡路のお蔦に口説き落されて、大映の女優陣は“なんて意気地のない・・・”とヤキモチ半分にマユを逆立てている。(デイリースポーツ大阪版 07/24/59) |