東宝の女優さんに弱い大映男優さん

 “うちの男優さんは、東宝の女優さんに滅法弱いね・・・”と、大映京都では、こんなウワサがしきりだ。『王者の剣』『四谷怪談』で、中田康子によろめいた長谷川一夫がこんどは『お役者鮫』(監督加戸敏)で、新珠三千代にからみつかれて音をあげれば、『濡れ髪三度笠』では市川雷蔵が淡路恵子の攻撃に目を白黒させている。

堅い長谷川も陥落

積極的にカキ口説く新珠/お役者鮫

 『お役者鮫』の長谷川と新珠の顔合せは、これが二度目。今年二月の『かげろう笠』以来だが、『かげろう笠』では、女髪結にふんして長谷川に秘かな思慕の念を抱いた新珠も、こんどの役は、柳橋の芸者で、積極的に長谷川をかき口説くという進歩ぶり。

 『お役者鮫』は、華やかな歌舞伎の世界に起る殺人事件を、スリルとサンスペンスで描いた異色時代劇。長谷川、新珠のほか鴈治郎、鶴見丈二、三田登喜子、美川純子らが共演しているが、この映画の長谷川は、花形役者ながらの女ぎらいで通っている堅物。これに新珠の芸者小浜がホレてとうとう陥落させるというわけ。

たじたじの雷蔵

いきなり抱きつく淡路/濡れ髪三度笠

 一方『濡れ髪三度笠』は、やくざと将軍の息子が珍道中をくりひろげるというコミック活劇。『ジャン有馬の襲撃』で一本調子な主人公を、一本調子に演じた・・・と反省する雷蔵が、こんどは草間の半次郎というやくざにふんして、ふくらみのある演技の中に、やくざのすべての要素を現わそうと大張切りだが、この半次郎に付きまとってはなれないのが、淡路恵子の女道中師お蔦。

 このほど行われた二人のラブシーンは、淡路がいきなり雷蔵に抱きついての物すごいファイトに、一瞬雷蔵の顔がサッとこわばるほどだった。セットの合間には、ビンボー、ビンボーとノロけておきながら本番になっての、この思いがけない体当り演技に、さすがの雷蔵もたじたじ。この勝負はどうみても淡路が押し気味といったところだったが、雷蔵の半次郎も、けっきょく淡路のお蔦に口説き落されて、大映の女優陣は“なんて意気地のない・・・”とヤキモチ半分にマユを逆立てている。(デイリースポーツ大阪版 07/24/59)

   

 

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