☆短評☆
このラストがおもしろい。ルウティンをひっくり返し、時代劇ののびのびした自由さをしめしたものだ。八尋不二脚本はさかんに人間や事件のとっぴな配合を試みている。若殿とやくざの友情、世子三十八名をクジにする公明さ、刺客のお墨付買収、関所の茶番劇、それに殿様廃業ぶりと勝手な虚構をひろげるのがうまく、笑いを作りあげた。
田中徳三演出も快調にすべる。若殿本郷と娘玉緒のコンビを清新に点出している。マヒナ・スターズの使い方も適当に哀感を流してうまい。市川雷蔵は筋のうえでは主動的ではないが、その代わり終始もうけ役みたいなもので、やっぱり光る。こういう軽時代劇になると実に明るくのびやかで、彼独特の品がものをいう。だいたいこの種の軽時代劇は、ものものしい重量時代劇よりもオリジナリティーもあれば若い弾力性もあって、ずっと楽しい。料理ぐあいもこれなら珍味に近い。(君島逸平 西日本スポーツ08/06/59) |