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 三百三十年前の徳川家康のころ、キリシタン大名、有馬晴信が長崎沖でポルトガル船を焼打ちした事件だが、映画は仮想のイベリヤ王国として扱っている。

 事の起りはイベリヤの極東根拠地珠江で日本人の娘(弓恵子)がイベリア船デイオ号の国旗を侮辱したというので、日本人が虐殺され、有馬藩の御朱印船も焼き払われる。そのうえ、デイオ号は損害賠償などの難題を日本へもってくる。一行が駿府の家康(三島雅夫)へ会いにゆく途中、有馬晴信(市川雷蔵)は、イベリア側に捕えられた御朱印船の宰領三郎兵衛(山村聰)の身柄を奪って事情を聞き、家康に訴えるが、聞き入れられない。

 意を決した晴信は、出港間もないデイオ号に総攻撃をかけるのが見せ場で、戦闘場面もいちおう型通りにとれているが、海がまるで池のような感じになったのはいただけない。有馬藩の客をことさらキリシタン信者らしく見せるのも、それほどの意味はないし、歯が浮く感じだ。ただ、デイオ号の奴隷になった日本人の舟子の姿や、ラスト近く、三郎兵衛がデイオ号上で切腹する場面がリアルでちょっと迫力がある。

 主演の市川雷蔵が力みすぎ、悲壮感が先に立つので、全体の調子もかたく、重苦しいものになった。カラーにすれば別の味が出ただろう。監督、脚本、伊藤大輔。1時間54分。

 

朝日新聞 07/16/59