大映京都で完成した伊藤大輔監督の『弁天小僧』は、同監督久々の娯楽時代劇で、『炎上』ですっかり男をあげた市川雷蔵を使って、どのような時代劇の醍醐味を味あわせてくれるか楽しみだ。
伊藤監督は昨年ビスタビジョンで『地獄花』を撮ったが、スコープ作品は今度が初めてで、名手宮川一夫キャメラマンと組んで得意の移動撮影(伊藤大輔をもじって、“移動大好き”というニックネームのあるのは天下衆知のところ)に、いろいろ珍しい画面構成を使っている。
得意といえば、この映画では、伊藤大輔十八番の大捕物シーンが出てくるのも楽しみの一つで、ラストシーンでは捕手に四百人のエキストラを使って、戦後空前の、大がかりな捕物撮影を見せてくれる。
この写真は、京都撮影所で一番大きい400坪A2ステージ一杯に組まれた船宿裏二階のセットで、地面の上に、じかに二階屋根を組んで、三日にわたって猛撮影を展開した。
主演の市川雷蔵のほか、青山京子、勝新太郎、阿井美千子、近藤美恵子、黒川弥太郎、田崎潤、舟木洋一、島田竜三、中村鴈治郎らが共演するという賑やかな顔ぶれで、伊藤監督も「理屈なしに楽しめる時代劇にしたい」と、ケレン味たっぷりの演出を、終始楽しそうに続けていた。
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