歌舞伎・映画の収穫のすべてを

 昨年夏『地獄花』を発表して以来、ながらく沈黙していた大映の伊藤大輔監督が、『炎上』『日蓮と蒙古大襲来』など、このところ好調の市川雷蔵と組んで、一年四か月ぶりのメガホンをとる。

 八尋不二脚本の天然色、ワイド『弁天小僧』がそれだ--

面白く花やかに

初顔合せの伊藤監督、雷蔵

『弁天小僧』はじまる

※・・・伊藤監督と市川雷蔵の顔合せはこれが初めて、「お互いに短い映画生活ではなく、よくこれまで顔が合わなかったものだが、それだけに興味をわくという感じだ」と、伊藤監督も半ば意外な顔つきで張切っている。

 作品は歌舞伎でお馴染みの「知らざあいって聞かせやしょう・・・」の名ゼリフも全部取入れ、「できるだけ花やかに。文句なしに面白く見てもらえる時代劇にしたい」と、従来にないくだけようである。

意気すこぶる盛ん

※・・・一方、雷蔵は“弁天小僧”に扮して初の女装姿「大体、僕が舞台から映画に入る時、なぜ大映を選んだかといえば、溝口先生、衣笠先生、伊藤先生と、時代劇の大監督がおられる点にひかれたわけです。僕の歌舞伎の修練を、映画で生かしていただけると思ったからです。そして溝口、衣笠先生には教えていただきましたが、伊藤先生とはその機会がなかった。それが、やっとこんど教えていただけることになったのですが、作品が“弁天小僧”という歌舞伎ダネであることも嬉しいんです。伊藤先生のご指導で、歌舞伎の雷蔵と、映画の雷蔵のすべてを、この作品にぶちこんでみたいと思います」と、この作品にかける意気込みをかたった。

(ファンお手製の切抜帖から)