大映京都『切られ与三郎』(監督伊藤大輔)は、市川雷蔵の主演で近く撮影を開始するが、雷蔵の相手役の"お金"にNHKテレビの富士真奈美の起用が決定、このほど撮影を前に初対面のあいさつをした。
お金は雷蔵演ずる与三郎の義妹、子種のない豪商へ養子として迎えられた雷蔵だが、間もなく娘が生まれる。その娘がお金だ。彼女は、後妻のはかりごとで財産を横領され、むりやりヨメに出されようとするが、「義兄さんが好きだった。義兄さん以外の人のところへはおヨメに行きたくない」というお金の言葉に、与三郎は妹をかかえて静かに海中へ足を踏み入れてゆく。
物語はこのような結末をつげるが、そのキメ手は義妹のお金に負うところが大きいというわけ。伊藤監督はこのため慎重な選考を重ねてきたが、たまたまテレビで富士をみて「この女優にかぎる」と即座に決めたそうだ。富士は、「時代劇は約束ごとが多くて、あまり気のりがしないのですが、相手役が雷蔵さんと聞いて、いっぺんで承諾しちゃいました。雷蔵さんは、スクリーンでは人が違ったみたいにきれいになりますね。なにかコツでもあるんですか」と聞けば、雷蔵真顔で、「大ありですよ。それぞれの個性を生かしてこそ、メーキャップの本当の意味がある。それをぼくはうまくつかんでいるだけです。富士君は日本人ばなれのした可愛さがある、これはこの作品の場合、大いに生かされてると思う」と、雷蔵はちょっぴり初対面の感想をもらし、最初はあがり気味でコチコチだった富士もなれてくると口かずが多くなり、こまかい演技の話に花を咲かせていた。
(サンスポ 05/23/60) |