大映京都のお盆作品『切られ与三郎』(伊藤大輔監督)は、いまクランクたけなわだが、このほど主演の市川雷蔵と中村玉緒が、洋画顔負けの激しいキスシーンを展開、話題となっている。

 場面は、お富との密通がばれスマキにされた与三郎(市川雷蔵)が旅役者の桂(中村玉緒)に助けられるが、一年後、ヤクザの親分の囲い女となった桂が、親分をしめ殺し、一緒に逃げてくれとかじりつくところ。玉緒にとっては初めての悪女役で、しかもキスの嵐をふらせるという役柄だけにスタッフ連を気づかわせたが、当の本人はいたって割り切った態度。

 伊藤監督は、この撮影に先立ち「ヌーベルバーグ調でいきすか」と冗談まじりに語っていたが、やがて“本番ッ”と同時に玉緒は雷蔵にとびつき一度、二度、三度と激しいキスの雨をふらせる。“カット”で離れた雷蔵の口元には玉緒の口紅がベッタリ。

 あわててハンカチをとりだした玉緒の顔はさすがに真ッ赤。雷蔵は「はじめはどうしたらいいのと心配していたくせに、玉緒ちゃんの攻勢にはドギモを抜かれた」と興奮さめやらぬ表情だったが、伊藤監督は「結構でした」の連発で、しごく満悦のようすだった。

(サンスポ・大阪版 06/21/60)