本格的な夏ですね。お変わりありませんか?さて、毎年夏が来ると当後援会も一歩前進、会誌「よ志哉」も一つ大きくなるわけです。この会誌も今年で四回目の夏を迎えたんです。この暑さを忘れさせ、皆さんの気持をとりこにしてしまう様な、そんな会誌に出来ないものかしら・・・そうそう皆さんに頂いた会誌のアイデアを忘れてました。さっそく探してみますと、ありました。四周年の特集としてふさわしいアイデアが、どんな内容かですって?それはこれから皆様にお贈りいたしますから、ごゆっくりお読み下さい。さあ、ごえんりょなくどうぞ・・・


 

「虚構の魅力」

京撮 企画者  税田 武生

 わたくしたち企画部の者が、雷蔵君の企画を考える時、徹底的に「見られる」存在、つまり映画スター雷蔵として、彼の「虚構」の魅力を探し求めるのが常です。

 その点では、丁度ファンの人達が、映画スターを見るのと、全く共通した点が、種々見受けられます。

 時に若い苦悩に満ちた大名に扮して、或は青年剣士、やくざなどに扮して画面にあらわれる彼は、実に魅力的です。

 彼の顔は、鋭い緊張感と充実感に溢れ、颯爽として端正です。その肢体は、やせ気味に━わたくしは、肥満した肉体は、若さを抹殺するものと考えます━優美とさえ言えます。

 もちろん、若さに似ぬ、たくましい演技力がプラスしていることは否めない事実ですが、これ等の秀れた資質は、彼の企画を考える時、様々なバラエティを与えてくれて、大変重宝なのです。

 この完成度の高い魅力は、彼の年令を考える時、まさに驚異的と言えます。ただここまでこの安定した魅力に、わたくしは、ぜいたくな不安をいだくのです。それは、フィルムというメカニック幻影の世界に埋没して、雷蔵君自身の生々しい魅力が、新しい芳香を放つことを忘却してしまうのではないかということです。幸い、彼は理性的で、自己批判に厳しい人ですから、自ら、その危険を乗り越えて行くことでしょう。

 暇があれば上京し、爆発するエネルギーを吸収することによって、自らの核分裂を計っていることで、それは賢明といえます。だから、わたくしの持つ不安は単なる危惧にすぎないと思います。

 前に本誌で映画の出来るまで≠紹介した事がありましたでしょ。あの時のは映画の全般についての説明でしたが、大映の企画ではどうなのでしょうか。

 伺ってみますと「時代劇の全企画は京撮でやりますが、決定はあくまで本社で、現在、企画部は十人の人がいてそれぞれ、どの様な作品がいいか研究している」そうで、「だいたい脚本に合せて配役が決定するのが普通ですが、逆に、例えば雷蔵さんにこの様な作品がいいのではないかと主役が先に決定する時もある」との事ですが、一寸会員さんの間で問題のあった他社で以前雷蔵さんが出演した作品が、題名が変って再映画化されているが、あれはどうしたわけでしょうかと伺うと「原作物の著作権は二年間そこの会社がもっている事が出来て、その後は無効になり、オリジナル物の場合は、会社から依頼して書いてもらうが、他社でやったからと云って会社としてはなんとも云えないし、作者の常識にまかせるより仕方がない」との事でした。

 そして、お話を伺っている間にだんだんと、雷蔵さんの作品の企画はもう少しなんとかならないものだろうか等、抗議的になったりまったく困った記者でした。抗議でなくインタビューなのに。最後に雷蔵さんにやって頂きたい作品は、これすべて、京撮企画部にお出し下されば良いと云う事を伺って、企画部をあとにしました。

 さて次は、俳優課、今まであんまり紹介した事のない課ですが、撮影所の中の一日一日のスケジュールは、ここで決められ行く、いわばあまり人に知られず、そして忙しい課とでもいいますか。面会を申し入れた千賀さんは、この忙しい中を縫って、快く会って下さいました。

「俳優さんのスケジュールは製作部で決めるのですが、セットの数から、どこには、どんなシーンで、何人必要とするか、ロケには、あの場合、だれをやるか等で仕事が毎日決まっていない。ここでちゃんとした事を決めないと、すべてうまく行かなくなる。他の課の仕事も大変でしょうが、気苦労の多い所は一番でしょう。ですから雷蔵さんも俳優課に来ても、そうした忙しい所ですから気をつかって冗談ばかり云っていますが、これからの映画は昔からくらべてむずかしくなって来ているから悩みも多いわけです。ですから雷蔵さんにもがんばってもらいたいし、どんな役でもこなせる人ですから、企画のいいものがあったらと思います。いつも冗談を云って笑わせているが、なにげない中から、なにかをつかもうとしている。そうした雷蔵さんをみていると、人間的に大変成長し、一寸も変っていないと思います」

 と熱心に時のたつのも忘れてお話をしてくれました。その後、俳優課の方から雷さんを語る原稿が届きましたので御紹介致しましょう。