本格的な夏ですね。お変わりありませんか?さて、毎年夏が来ると当後援会も一歩前進、会誌「よ志哉」も一つ大きくなるわけです。この会誌も今年で四回目の夏を迎えたんです。この暑さを忘れさせ、皆さんの気持をとりこにしてしまう様な、そんな会誌に出来ないものかしら・・・そうそう皆さんに頂いた会誌のアイデアを忘れてました。さっそく探してみますと、ありました。四周年の特集としてふさわしいアイデアが、どんな内容かですって?それはこれから皆様にお贈りいたしますから、ごゆっくりお読み下さい。さあ、ごえんりょなくどうぞ・・・


 

 

「げんこつ」

演技事務  内海 透

 雷ちゃんのげんこつは暴力追放の今日、その存在価値を認める貴重なものの一つである。撮影開始四十分前、何時も正確に車が俳優会館前にすべり込む。「お早よう!」言葉と共に、げんこつが一発背中に飛ぶ、これが朝の挨拶である。

 時間待ちの折、事務室に居る雷ちゃんは何時も朗らかだ。貴公子然としたあの風貌からは想像もつかぬ明るさで、冗談を飛ばして皆を笑わせる。精神的にも肉体的にも重労働と云える仕事の中で、苦しさを微塵も表わさぬその態度は、どんな修行の賜なのか。徹夜作業の日など、皆の労わりの目をはね返す様に却って、明るく先頭に立って振舞う雷ちゃんの姿を見る思いがする━。

 そんな雷ちゃんが、げんこつをふるう。僕達ばかりではない。雷ちゃんのげんこつは撮影係、照明係、をはじめ諸々の裏方に迄及ぶ。皆被害者である。痛みの中に雷ちゃんの親睦の情≠汲み取るからだ。みんな大仰に顔をしかめは毒づく。その掛合の楽しさ、そして又、逃げまどう男を追うユーモラスなボクシング、雷ちゃんのげんこつを眺める現場の人達の笑いは明るい。映画は様々な部門の協力で成り立っている。だから、和やかな雰囲気の中でこそ、良い映画が生まれるのだ。スタアが高慢な気取りで包まれていたら、自然、現場の雰囲気は冷やかなものだ。その意味で、雷ちゃんのげんこつは、スタアと現場を結ぶ架橋と云えよう。

 ━但し、梨園出身にしては、少々腕力が強すぎる、之が玉に瑕ではある。

 さて次にご案内致しますのは、大映親刀会です。時代劇には、なくてはならない殺陣。その研究会がこの親刀会です。その目的は、大映京都作品の伝統の名誉と発展のため、殺陣技術の面に渡り、一層の質的向上と量的充実を計り、以って大映京都の作品価値に積極的に貢献する、と云われております。

 雷蔵さんはこの会の顧問です。長谷川一夫、勝新太郎さんらも名をつらね、宮内昌平さんが会長です。この会員資格も役員会議で決定するとされており、中々きびしい会則があり、会則に違反したり会の名誉を汚した者、規律を乱したものは除名する、とまでうたわれております。会員は三十名。さてこの様な親刀会のメンバーの一人松岡さんは、次の様に雷蔵さんの事をお知らせ下さいました。