親刀会から見た雷蔵剣士
松岡 良樹
殺陣でいつも叩き切られ、その上みみず腫れの産物までちょうだいしている親刀会員から見た雷蔵剣士の雑感をしてみよう。
とかく立派≠ニかえらい≠ニいわれる人達には妙にかび臭い体臭があるものですが、この剣士にかぎってはそんな欠片一つありません。
上下の差別無く、誰とも謙虚に応じてくれますし、そしてすっとぼけた面白さをかならず感じさせられます。仕事中にもよく威勢いい冗談を飛ばしてスタッフ連を笑いの中に誘い込みますが、その冗談にもシャープでセンスがありますが、本当に明るい雰囲気に包まれます。聖徳太子現代版という感じがします。
どの様な長い殺陣でも三回とテストしませんから、これから察しても頭のきれる人ですね。その殺陣も新しいものと考慮しつつ取り組んでいる様子が伺えます。『千羽鶴秘帖』で見せた小刀一本でのスピード感溢れるものがそれであり、『薄桜記』での抜く手を見せず切り捨てる片手の新剣法、そして『大菩薩峠』で見せた盲目で槍一本のニヒルな立廻りと、定型化しない新しいものへと古風なからを破りつつ現代人にアピールする自己の殺陣を生み出していった様に思われます。
迫力を出す為、カラミに直接当てる立廻りをしたのもこの人です。お陰で僕達はみみず腫れが絶えませんが、誰一人として文句一つ云わず、何の悪感情をも抱かせないのは、その誠実な人柄が反映している為でしょう。
外見は物静かな人柄を思わせますが、非常にファイトがあり常に反省しながら、前身のみ考える芯の強いねばりを感じさせられます。この力強い人間性を土台に開花したものが、あの『炎上』であり、『ぼんち』ではないでしょうか。この男性的な反面大変清々しい気品があり、その中に格調の正しさと荘重さがハーモニーして本当の大人と云う感じがします。切られ役の僕達も、革命児雷蔵剣士を俳優の手本として、大いに勉強したいと思っています。
次に雷蔵さんのお家の方に皆様をおつれいたす事に致しました。静かな住宅地、どっしりした構えの落ち着いたお家、呼びリンを押しましょうね。
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