仙台藩の家老で三千石の砂子三十郎の娘お貞は、仙台一の美人な上に薙刀は静流の使い手。この娘が無役で七百石の井伊仙三郎直人を見初め、 押掛女房同然に仙三郎の妻となる。
仙三郎は博打に身を持ち崩しかけていたが、お貞は朝起きると仙三郎に一両与え博打に行かせ、仙三郎は負けて戻る。十日ほどこうしたことが続き、朝仙三郎が一両をくれと言うと、お貞は太刀合って負けたら一両差し上げましょうと言い出す。たかが女と太刀合った仙三郎だったが、お貞の薙刀に完敗し、「そのような腕前でいざという時どうご奉公するのか?」と説教される。
仙三郎は江戸は木挽町柳生宗冬の道場で大道寺兵馬について三年修行し上目録の腕前になって仙台に戻る。戻って見ると屋敷は見違えるほど立派になっていて、お竹という下女に帰還を告げると、お貞が出て来たが、すすぎを取ろうとするお竹を制して裏庭でまず太刀合おうと言う。
太刀合って見るとお貞の目には、仙三郎は腕はあげたがまだまだ隙だらけで、更に修行が必要と映る。逆に仙三郎は腕を上げた分だけお貞の強さがわかり、打ち込んではみたもののあっさりお貞の薙刀に敗れてしまう。お貞は仙三郎に休息も食事も湯茶すら許さず、江戸へ追い返す。(仙台から福島〜二本松〜白河関〜宇都宮〜栗橋〜江戸まで道中付になっている)
柳生の道場に戻った仙三郎は意を決して修行に励み、夜も立木を相手に一人稽古。ある夜この姿を見た柳生宗冬は大道寺を呼んで事情を聞き、自ら指導に乗り出す。三年後免許皆伝となった仙三郎を宗冬は呼び出し「決して負けるな!負ければ柳生の名折れ」と言って送り出す。
仙台の自宅に戻った仙三郎はお貞と太刀合う。お貞の目には仙三郎に兎の毛で突いたほどの隙もないのがわかる。仙三郎も打ち込めないまま時が過ぎ、お貞は薙刀を投げ出し「よくぞここまでご修行なされた」と仙三郎を讃える。
仙台の鬼夫婦と異名を取った二人は仲良く暮らした。