陸軍中野学校シリーズ(66/6〜68/3)

 日本陸軍の諜報員養成機関といわれる陸軍中野学校の実態とその活動を描く邦画では、珍しいスパイ映画。66年〜68年にかけて5本製作され、時代劇スターだった市川雷蔵の現代劇での代表作となった。

 陸軍中野学校の一期生となった椎名次郎が敵国スパイをつきとめて、その謀略を打ち砕くというのが基本設定だが、増村保造が監督した一作目のみその基本パターンからはずれて、中野学校生ひとりひとりの悲哀を描いた青春映画として出色のできとなっている。娯楽色がついたのは第二作目以降。

 主人公・椎名のキャラクターは“大菩薩峠”“眠狂四郎”シリーズで市川が培ってきたクールで無頼な二枚目役の延長線上にあり、まさにハマリ役。レギュラーらしいレギュラーは上官役の加東大介ぐらいしかおらず、あとは毎回女優がゲスト出演というシリーズもののお決まりパターン。全作モノクロ撮影の画面も、とかく嘘っぽくなりそうなスパイ戦にリアリティを与えている。( ぴあ CINEMA CLUB[邦画編]より)


陸軍中野学校 シリーズ

陸軍中野学校
 
 
 
 

 

   

(04/27/66)

 

 大映『陸軍中野学校』(増村保造監督)は市川雷蔵の珍しい軍服姿から撮影を開始した。

 中野学校とは昭和十三年ころ日本に初めて生まれたスパイ養成学校のこと。この学校を舞台にすればおもしろいドラマができると、映画各社は一度は企画したがいずれも時期、脚本、主演者の点などで流れている。『忍びの者』の山本薩夫監督も『忍びの者』現代版としてやりたいといっていたほど。それがこんど大映で実現することになったわけだが、主演が『忍びの者』の市川雷蔵というからまさにピタリの役柄。

 雷蔵は中野学校第一期生としてスパイの訓練を受ける。金庫の開け方、暗号の解読、忍術から女の攻め方まで。一年たって卒業試験に英国大使館から暗号コードブックを盗む。だがすぐ英国に知られてしまい、暗号は変えられてしまう。中野学校が盗んだことをスパイして英国に通報したのは、雷蔵の恋人のタイピスト(小川真由美)だった。やむをえず雷蔵は恋人をころさなければならなくなる、という物語り。

 増村監督は「スパイ映画というより青春映画をねらっている。中野学校に入れられた男がこうするほか生きようがなかったという話なんだ」と抱負を語っていた。また雷蔵は「スパイの宿命的な生き方を一人の男を通じて演じてみせるつもりだ。もちろん“忍びの者”に通じるものがありますね」と髪を短くして、しかめっらしい軍服に身をかためたまま話していた。

 

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