陸軍中野学校シリーズ(66/6〜68/3)

 日本陸軍の諜報員養成機関といわれる陸軍中野学校の実態とその活動を描く邦画では、珍しいスパイ映画。66年〜68年にかけて5本製作され、時代劇スターだった市川雷蔵の現代劇での代表作となった。

 陸軍中野学校の一期生となった椎名次郎が敵国スパイをつきとめて、その謀略を打ち砕くというのが基本設定だが、増村保造が監督した一作目のみその基本パターンからはずれて、中野学校生ひとりひとりの悲哀を描いた青春映画として出色のできとなっている。娯楽色がついたのは第二作目以降。

 主人公・椎名のキャラクターは“大菩薩峠”“眠狂四郎”シリーズで市川が培ってきたクールで無頼な二枚目役の延長線上にあり、まさにハマリ役。レギュラーらしいレギュラーは上官役の加東大介ぐらいしかおらず、あとは毎回女優がゲスト出演というシリーズもののお決まりパターン。全作モノクロ撮影の画面も、とかく嘘っぽくなりそうなスパイ戦にリアリティを与えている。( ぴあ CINEMA CLUB[邦画編]より)


陸軍中野学校 シリーズ

陸軍中野学校
 
 
 
 

 

 

 市川雷蔵は大映東京でクランクインした『陸軍中野学校』(監督増村保造)をシリーズ化しようと、この久しぶりの現代劇に懸命に取り組んでいる。

 “中野学校”とはスパイ養成機関で、映画はこの学校の初期を取り扱ったもの。全国の青年将校の中から選抜された数人の生徒が、肉親からも身を隠してスパイ技術をみがく苦心を描くもので、雷蔵はこの生徒のひとり。柔剣道はもとよりカラ手、ボクシング、レスリングとあらゆるスポーツに精通することもスパイのひとつの要素とあって、雷蔵は撮影のひまをみては柔道その他の練習に余念がない。

 剣道のほうは『剣』で一応の基本を身につけたが、柔道はこんどが初めて。柔道ものの先輩本郷功次郎を臨時教師にドタンバタンと汗を流す。「運動神経は普通ですね。相手の力を利用してワザを仕掛ける受けの柔道は雷蔵さんに向いてますよ」とは本郷教師?のことば。

 「こんどは“中野学校”の創成期を描いたもので、第一期生のわれわれが卒業するまでの物語りです。この映画をぜひあてて、つぎは卒業した生徒が満州をはじめ各国に派遣されて大活躍する話をとっていきたいと思います」と雷蔵は語っていた。   

 

                         (05/03/66)

 

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