さて西方の男が手ごめにする方は、大映京都の『お嬢吉三』。お嬢吉三(市川雷蔵)が旅の途中で女衒から娘を預り、一夜、旅籠でその初穂をいただこうというところ。

 このシーン田中徳三監督にいわせると

 「最初は静かに、ついで徐々に盛上げて、ラストは“男と女”になってもらいます」

 とのことだが、つまりは和製“恋人たち”をねらったもの。本番を前に雷蔵ニヤニヤ笑いながら

 「玉緒ちゃん、覚悟はいいですか・・・」とおどせば、玉緒は

 「わたしも『講道館に陽は上る』で柔道習ったのよ」と大した意気ごみ。

 しかしスタートの声がかかると、いままでの冗談はどこへやら、雷蔵は瞳の色まで獣欲を思わせるものをみせ、受ける玉緒も娘らしい必死の防技?を展開。セットの中は高まる二人の吐息とカメラの音だけという異様なまでのふん囲気が高まる。これを田中監督は細かいカットで捕え、一そうの効果を出す。やっとカットになって雷蔵は

 「念願の『好色一代男』(西鶴)がやれそうなので、色道修行の一つとやりましたが、さすが上りました。でも、玉緒ちゃんは凄い迫力が出てきましたねえ」

 と照れくさそう。