『江戸っ子祭』以来、新感覚の時代劇をねらっている大映京都では、その系列の作品として『お嬢吉三』のクランクを続けている。監督には新人田中徳三を起用し、しかもゴールデン・ウィーク封切を目指して、人気頂上の市川雷蔵を中心に小野道子、浦路洋子、中村玉緒らを配してのにぎやかな顔ぶれは、それだけでもセットに張りつめた雰囲気をみなぎらせている。
雷蔵は昨年『弁天小僧』があり、江戸のチンピラやくざを演じて好評だったが、こんどはさらにくだけた、いわゆる軟派青年。雷蔵自身、中学時代のアダ名が「お嬢」だったそうで、「これもなにかの因縁でしょうか」と苦笑している。それだけにこの色模様にみせる雷蔵の意気込みはすばらしい。
娘義太夫の小野道子、勝気な下町娘の浦路洋子、生粋のシロウト娘の中村玉緒などと、口説いたり口説かれたりの大活躍だ。
「今年のボクの最大の目標は西鶴の“好色一代男”」とかねて明言している雷蔵だから、色道修行の厳しさは並大抵でない。現代劇の方でねばっこいラブ・シーンは経験ずみの小野道子ですれ、「まあ、雷蔵さんたらスゴイ熱演ね」と頬をあからめるぐらいである。 |