伊藤大輔演出、勝新太郎、青山京子共演の天然色ワイド作品『弁天小僧』がそれだが、このものがたりにつきものなのが例の浜松屋ゆすりの場だ。仲間の南郷力丸を供の者に仕立てて、菊之助は良家の娘に化け、わざと万引したと見せて相手の虚につけこみ、、逆にゆすりを始めるというう名場面で、「知らざアいって聞かせやしょう・・・」ではじまるセリフが聞かせどころになっている。

 歌舞伎出身の雷蔵のことだから心得たものではあったが、雷蔵より心配したのが関西歌舞伎の重鎮でである養父の市川寿海。一日撮影所を訪れ、折柄撮影中だった浜松屋の場の雷蔵におよそ一時間こまかい注意を与えた。この日は雷蔵は娘島田の重いカヅラに胸元高くしめ上げた衣装を一日中つけっ放しで頭痛がするは、胸は苦しいはで「女の人の苦しさがよくわかるよ」とネを上げていた。

(日刊スポーツ東京版  11/04/58 )