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 但馬屋のせがれ世之介は、父親夢介の心配をよそに、悪友勘九郎と女遊びに夢中。三十後家のお杉のただれた愛欲から解放された世之介は、息つくまもなく、通りがかりの浪人の女房お梶の美貌にひきつけられその跡を追うほど。遊女吉野太夫となじみの世之介は、誓紙をとりかわす熱い仲。世之介のあまりの女遊びにたまりかねた父親夢介は、豪商春日屋の娘お園との縁組を進めるが、お園にも意中の人があることを知った世之介は、お園と共同謀議して、縁談をぶちこわす。

 あまりのことに怒った夢介は勘当の代わりにと、老僕をつけて江戸の出店へ修業に旅立たせる。だが抜け目のない世之介は、勘九郎とともに、老僕をまいて気まま旅。江戸へつくや、出店の支配人をだまして、湯水のように金を使っての廓通い。通人月夜の利佐の手引きで吉原第一の高尾太夫に会うが、利佐と高尾の愛情を知ると気前よく身請けしてやる。驚いて江戸にかけつけた夢介から、きびしく勘当をいい渡された世之介は、申しわけにと頭をまるめてお寺入り。だが、ここでも浮気の虫がおさまらず、寺を追放されるハメになる。

 その世之介をなぐさめてくれたのは殊勝な顔の色比丘尼。世の中のがめつさをいやというほど知らされた世之介は、流れ流れて北国の漁師町へ。網元の親分の二号さんお町の姿に、世之介の心は動く。世之介の甘い言葉に一たまりもないお町は、二人でかけ落ちをはかる。だが、追っ手に捕えられ、お町は輪姦され、世之介も半殺しの目にあう。気がついた世之介を介抱していたのは百姓の女であった。この女の口から、お町の自殺を知らされた世之介のほおを涙がぬらすのだった。

 それから数年。今は私娼のヒモになり下がった世之介ではあったが、田舎大尽のお供で京へ、大坂へ。吉野太夫と再会したものの、遊女のまことは金のある間だけと冷たくはねつけられ、世之介は呆然。その世之介の目に、今はおちぶれて気が狂ったお園のあわれな姿がうつった。

 久方ぶりに両親に会おうと但馬屋の前に来ると、葬儀屋、墓石屋、花屋がうろうろ。父夢介が臨終というのである。そこは血の通った親子の仲。世之介は父の枕もとにかけつける。だが、夢介から三つの遺言をいい渡されるが、世之介はニベもなくはねつける。このショックで夢介は憤死。母もまたその跡を追う。

 いまや但馬屋の当主となった世之介は、金は使うためにあるものと、悪友勘九郎とともに、豪勢な女遊び。評判の美女夕霧太夫となじみ、万金をつんで自分の女にしようとする。この世之介の遊びぶりを見た所司代の役人は、冥加金を申しつけるが、世之介は一言のもとにハネつける。このため但馬屋は財産没収、所払いを申し渡される。いち早く知った世之介は夕霧とともに日本脱出をはかるが、その途中で役人に襲われ、夕霧ははかなく死んでゆく。夕霧の冷たいむくろを抱いた世之介は、えたいのしれない怒りにとらわれて天に向かって「ドアホ」と叫んだ。

 世之介は勘九郎らとともに、好色丸にのって船出する。「こんな日本には、あきあきした。女護ヶ島に渡って、しあわせに暮らすのや・・・」昂然と胸をはっていうのだった。

(03/05/61)