三月の大阪歌舞伎座公演を拝見して思いました事は、なんと云ってもまだあまり名前の知れていない若手俳優のめざましい発展ぶりだと思いました。

 まず第一に市川雷蔵さんで、成程声量五人男の中に入ると云われる位声もよく通り、舞台度胸も確実だと思います。あの「曽我対面」の時の八幡等、先輩の方々にひけを取らない演技ぶりや、恵まれた容姿で、私には大変前途有望な若手俳優の一人だと思われました。

 せっかく雷蔵さんも頑張っておられるのですから、ただ人気のある若手俳優の人達ばかり良い役をつけないで、もっともっと広い目を持って、慎重に配役をきめて欲しいと思います。又月々きまった公演だけでなく、“若手歌舞伎”や“つくし会”などでどんどん色々なお芝居の役を手がけさせて、少しでも広く深く経験を重ねさせたらと思います。

 東京から来られた錦之助さんも、あの「土蜘蛛」の巫女は大変美しく、女らしさがよく現われていたと思います。

 私はまだ高校一年生の未熟者ですが、大変歌舞伎が好きで、カブキのより一層の発展を望む一心から。この様なえらそうな事を申しましたが、これからの歌舞伎の発展には是非若手がしっかりして中心となって行かなくてはならないと思います。